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貸株金利はどうやって決まるのか?」にて、貸株金利の決定の元になる需給の解説をしました。
ここでは具体的に、グロース株がなぜ高い貸株金利が付くのかについて解説していきます。
グロース株は貸株の供給は限られる
貸株金利は需給で決まりますが、グロース株の貸株金利が高い最大の理由は、グロース株は貸株の供給が限られるからです。
まず、グロース株は時価総額の規模が小さかったり、流動性が少なく、証券アナリストのカバーも無いなど投資信託など機関投資家の長期投資が入りづらいです。
長期保有の機関投資家は貸株の有力な供給元ですが、まずこれがほとんど無いということになります。
創業者などの個人大株主が貸株しているかどうかの影響が大きい
また、グロース株は上場してからの日が浅く、創業者や役員・従業員などの会社関係者が発行株数の過半数を占めているということも珍しくありません。
そうなると、創業者や会社関係者などの個人株主が貸株をしているかどうかが、貸株の供給の大きな要素となります。
上記は
2023年IPO主幹事ランキングですが、ネット証券はSBI証券が入っているくらいで、1位の大和証券、2位の野村證券など伝統的な大手証券会社が強い状況です。
これらの伝統的大手証券会社は一般の個人株主に対して貸株サービスを提供していません(創業者などと個別の貸株契約を締結する事はありますが非常に限定的です)。
IPOの際は上場以前から保有していた株は主幹事証券の口座でまず管理となるので、創業者や会社関係者などが、貸株をしたいと思ったら、株を貸株が出来る証券会社に出庫(移管)する必要があります。
ただし、出庫(移管)もIPOの主幹事証券との関係性でやりにくかったりしますし、事業で忙しく貸株に興味が無い経営者も多いので、往々にして保有株が貸株されないまま主幹事証券で管理される状況が続くことになります。
さらに、グロース株では税制適格ストックオプションを行使して取得した株式や、譲渡制限が付いた株式の割合も高いですが、これらの株式はそもそも貸株に出せません。
上記の理由から、グロース株の貸株供給は、零細個人投資家の現物株や信用取引の買残主体となり、全体の供給は限られることになります。
グロース株は空売り妙味が大きい
グロース株は流動性が低い銘柄が多く、そのため株価の値動きが大きくなります。
値動きが大きい銘柄ほど、空売りによって短期的に利益を上げやすくなります。
また、グロース株は機関投資家の買いの割合が少なく、個人投資家の比率が高く、信用買い残もたまりやすく空売りによる売り崩しがしやすい状況となります。
これらの理由からグロース株は空売り妙味が大きく、空売りの需要は大きくなります。
ここまで述べてきたように、貸株の供給が限られる一方、空売りの需要は旺盛なのでグロース株の貸株金利は高くなります。
大型株、プライム銘柄の貸株金利が低いのはグロース株と正反対の理由
大型株やプライム銘柄のほとんどは最低貸株金利の0.1%しか付きません。
大型株の貸株金利が低いのはグロース株と正反対の理由です。
大型株は機関投資家の保有割合が高く、豊富な貸株供給がありますし、グロース株に比べると短期的に収益を上げる空売り妙味も小さくなります。
需要に対して供給が十分であるため、貸株金利は0.1%と最低金利となります。